大石 直人氏 『航空無線通信士試験 受験体験記』

航空無線通信士試験 受験体験記

受験期  平成14年2月
使用教科書  無線従事者国家試験問題解答集 航空無線通信士 (平成6年8月〜平成13年2月)
・ 無線従事者養成課程用標準教科書 「無線工学」 航空無線通信士用
・無線従事者養成課程用標準教科書 「法規」 航空無線通信士用
いずれも発行は「財団法人 電気通信振興会」

・勉強方法
一応、私も航空従事者ではありますが、現在の仕事上、この資格が無ければ困るというわけではありません。
ただ、この資格があれば職域は広がりますし、趣味にも使えるかも知れない、と考え、受験を思い立ちました。
が、「準備をしなきゃなぁ。」、などとのんびり構えているうちにあっという間に試験20日前、ここに至ってようやく重い腰が上がりました。

以前にもこの資格を受験しようとしていた時期がありました。実際に受験はしませんでしたが、その時に電気通信振興会発行の問題・解答集、「法規」及び「無線工学」の教科書は購入していました(いずれも平成8年発行)。
「いよいよこの本たちの出番がやってきたな。」というところです。
ところが、たまたま同じ日程で受験する予定であった職場の先輩が教えてくれました。
「最近傾向が変わっているぜ。」
慌てて先輩の買った最新の過去問集を見せてもらうと、「英語」の問題の出題形式が大幅に変わっています。
新たに問題集を購入する予算も無いので、先輩の問題集を借りて勉強させてもらいました。

さて、勉強方法ですが、既に受験し合格している職場の同僚に聞いてみると、「大丈夫、大丈夫、本当に過去問通りだから。」とのこと。
となれば勉強方針は、「取り敢えず過去問を解いて行き、間違えたところや行き詰まったところに来たら、はじめて教科書を読む」、というやり方が効率的だと考えました。

まず始めたのは、ヤマ勘が効きそうも無い「無線工学」。とりあえず平成6年8月の問題を解いてみると、案の定、自己採点で9点(70点満点)という惨憺たる成績でした。焦りが気合を呼びます。
進め方は上述の通り、とにかく(年度の古い方から)問題を解き、知らない問題に当たったら参考書を読んで答えを考える、というものです。試験一回分の問題を解いて答え合わせをした後、その中の初見の問題や間違えた問題を
再度解き直し、次回ぶつかった時には解けるようにしました。こうすると初見の問題を解くのには相当の時間がかかりますが、一度解いた事のある問題は多少ひねってあっても即答できるようになるので、過去問の年度を追う毎に
総回答時間は少なくなり、また正当率は上がっていきます。斯くして5回目以降の問題ではConstantに合格点49点(7割正解が合格点)が取れる様になりました。(12日経過)

次に取り組んだのは「英語」です。英語自体は苦手ではないのですが、昔(平成8年発行)の問題集には英長文、和長文問題があったので、手強いなぁ、と言う印象がありました。
ところが、先輩に借りた最新の問題集では、それらは全て選択式の問題に置き換わっていて、近年はかなり易化しています。
実際に一回分を解いて見ると昔の問題ほど難しくはありません

「県立高校の入試レベル」位かな、と感じました。ただ、航空や無線の専門用語が英語で出てくるのが要注意ですが、航空業界の受験者ならば、日常業務でよく聞く単語ばかりなので心配はないと思います。

ヒヤリングについては対策の立てようが無くて、放っておきました。問題文自体の難易度は同上、専門用語が出てくる点も同じだと感じました。

というわけで英語の対策は後回しとして「法規」対策を先行します(実は「法規」対策後には「英語」の過去問を解く時間的余裕は残りませんでした)。(13日経過)

さて「法規」。「法規」も「無線工学」と同様の進め方で勉強しました。こちらも回数を重ねる毎に点数を伸ばし、いずれは何年度の問題を解いてもConstantに合格点をクリア……のはずだったのですが、期待に反して「法規」の方は
点数が伸びません。解けども解けども点数は合格点付近をウロウロするばかり。出題範囲が広いのか、何なのか…。
結局、試験当日まで最も不安の残る科目のままでした。(19日経過)

そして最後に「電気通信術」。これは既にこの資格に合格している後輩が教えてくれた訓練方法が役に立ちました。
それは「とにかく、普段目にする英文やローマ字を片っ端からフォネティックに置き換えて読んでみる。」というものです。
例えば、駅前の交番に「KOBAN」とあったら、「キロ、オスカー、ブラボー、…」とブツブツ。駅のホームで「YOKOHAMA」が目に入ったら、「ヤンキー、オスカー、……」とブツブツ。これだけの対策でも役に立ちました。

試験前日には直近(H13年2月)の問題を全科目解いて、何とか合格点。(20日経過。Time Up!)
決して満足な対策を立てられたわけではありませんが、受験者の都合とは無関係に試験日はやってきます。

・受験当日の事
斯くして試験当日。都営地下鉄、大江戸線の勝鬨駅から徒歩で10分弱。晴海の新名所トリトンスクエアへと流れる通勤客の波に紛れながら試験会場に向います。
日本無線協会が入っているビルの1階はロビー、2階は事務所、3階が試験場です。受験者はエレベータを使わないように、とのことなので階段で会場に向います。会場につくと、受験者は結構な人数であることが分かりました。大教室1つと、中くらいの教室2つ分の会場が用意されていました。毎回こんなに多いのか、と思っていたら午後の「無線通信術」の試験前に受験者の様子を見た試験官の一人が「うわ、今回は多いなぁ!」と仰っていました。それから少し戸惑ったのが座る席です。普通、試験というと机に受験番号が書いてあって、受験生が座る場所は決まっている場合が多いですが、この試験は全くの自由席。大学の期末試験の様です。どこでも空いている座席に着けばよいようです。もっとも受験生の退出時間はばらばらですから答案も一斉回収するわけではないし、合理的といえばそうなのかも。

さて、1科目目の「無線工学」(9:30〜11:00)。
試験開始10分前位に問題用紙と解答用紙が配られます。そして一旦問題用紙を表にして、「航空無線通信士用問題」を表す識別記号が、全ての用紙の右下に印字されているかを確認する様に言われます。確認したらまた問題用紙を裏側にして伏せ、試験開始の合図を待ちます。筆記科目は全て試験前にこの確認をしました。実はここで一足お先に問題に目を通してしまう事もできるのですが、そんなせこい事をしても…ねえ…。
自信を持って望んだこの科目。予想通りの楽勝…のはずだったのに大誤算。過去問でお目にかからなかった問題が予想外に多く、四苦八苦の解答となりました。選択式問題の2問目に至っては「RC回路のインピーダンス問題」の選択肢が複素数表示です。大学の講義などで一度でも目にしたことのある方なら正答を選べましょうが、初見で面食らった方も多かったのでは?周波数が角周波数表示であったのは許せるとしてもちょっと過去問からの逸脱が激しかったなぁ。後の自己採点で凡ミスも見つかり、全科目中最も薄氷の思いをした科目でした。

2科目目はもっとも心配な「法規」(11:10〜12:40)。
ところが今回の問題はほぼ過去問通り。すんなりと解答を済ませ、見直しをしてなお30分の時間を余して試験場を退出しました。

ここで昼食です。この試験会場は昼食は便利です。会場ビルの隣にコンビニがあるのでそこで弁当を買っても良いし、すぐ近くの交差点には遊・職・住の複合施設「トリトンスクエア」ができたのでこの中の飲食店街で食事をするのも良いです。
特にトリトンスクエア内は寿司、蕎麦、和食、中華、洋食、エスニックと何でもありますし、、食後にはカフェも楽しめ、なかなか充実しています。ただし、ビジネスパーソン達で混雑するので時間に余裕を見ないといけないことと、費用がかさむ
(¥1000位)のが難点でしょうか。
麺好きの私は蕎麦屋を選び、食後はスターバックスでコーヒーを一服。午後への英気を養いました。

さて、食後は3科目目となる「英語」(13:30〜15:00)。
この科目は全教室一斉のヒヤリングから始まります。試験開始早々の20分間をかけてヒヤリング7問を終えれば、残り時間は各人自由に読解・作文問題に取り掛かれるという段取りですね。ヒヤリングは3教室一斉にテープの音が流れます。問題部分の読み手はネイティブの男性でした。各問題につき3回読んでくれます。1回目は1単語づつ区切って超ゆっくり、2回目はゆっくり、そして3回目は普通の速さで読まれます。なるべく1回目で全て聞き取り、聞きそびれた個所は2回目で確認します。

3回目は速くて聞き取れないのでほとんど最終確認です。「読み」の間隔も適当にあるので解答(選択肢)を選ぶ時間は十分だと思います。
読解・作文問題の方は例年通りの難易度でしたので、特に支障無く終えることができました。今回の試験は職場の同僚が多く受けていたのですが、その中で英語を苦手とする一人が「さっぱり分からなかった…。」とも言っていました。
英語は得手不得手の分かれる科目ですので苦手意識のある方は英単語だけでもしっかり勉強した方が良さそうです。

そして、最後の「電気通信術」(15:40〜終了時間は人それぞれ)
ここで上記3科目を受験した席からは離れます。「電気通信術」を同日受験する人達は受験番号毎に改めて指定された3教室に分かれます。私は大教室での受験だったのですが、大教室組は更に窓側組と廊下側組の2グループに分かれました(これまた自由席)。
ここでまず、試験官から受験要領の説明を聞きます。「受話」の解答用紙の使い方、訂正の方法だとか、「送話」の始めに「はじめます。本文」、と言い、終了したら「終わり」と言う決まりだとか。
試験終盤、気が緩んでついぼんやりしてしまう時間帯ですが、しっかり聞いておきましょう。

説明の後は「受話」の試験。
説明を聞いたときの席のまま解答用紙が配られます。赤い枠線の入った紙1枚です。このHPの体験記を読んで知っていたので枠線に鉛筆で一枠に5文字づつ、100文字分の目盛りをふって試験開始を待ちました。

テープからの音声の読み手は日本人男性。
「アルファ」から「ズール」までのテスト音声の後、いよいよ試験開始。
しかしこれが速い! ランダムなアルファベットを5文字ごとに一息いれて読んでくれるのですが、それでも笑ってしまうくらい速い。

忙しいです。たったの2分で100文字だから1文字大体1秒。これが100文字続くのですから途中で必ずコケそうになります。

ですが、解答用紙に目盛りをふっておいたおかげですぐに5文字毎のリズムに乗れましたし、書き取り中も残り文字数が分かって安心出来ました。
他の体験記の皆さんが仰っているように、テープが流れている間は書き直す暇なんてありません。ひたすら前進あるのみです。
きれいに記入しようとも思うのですが、スピードについていくのが精一杯で余裕がありませんでした。勢い筆圧が高くなるので
筆記具はシャープペンでなく鉛筆がよかろうと思います。シャープペンをノックして芯出ししている暇すら惜しいからです。
しかも筆記具は複数必要です。下に落としたり、万一芯が折れたりした時の為です。
テープが終わると何秒もしない内に「ハイ、鉛筆を置いて下さい!」
怒涛のような書き取りが終わった後、手は汗でびっしょり、胸はどきどきしていました。

いよいよ最終科目、「送話」の試験です。
「受話」の試験の後は全員一旦教室から出されます。受験者達が廊下で「いやー速かったねぇ!」などと雑談している内に、試験官たちは教室内で会場のセッティングです。しばらくすると受験番号の若い順に実技を行う受験者だけが呼ばれて教室に入ります(最初に5〜6人入室し、後は1人終わる毎に1人ずつ)。順番を待つ他の受験者はみな廊下で待機させられました。
待機している間ですが、受験者達はワイワイ雑談しているし、呼び出しの声も特に大きいわけではないので、呼び出しを聞き逃さない様に、自分の順番が近くなったら呼び出す試験官の近くに陣取ったほうが良さそうです。私の順番は比較的早く回ってきました。教室に入ると、中では試験官たちが(6名くらい)教室の四隅や中央にばらばらと点在しています。受験者の送話の声が干渉しない様にしているようです。各試験官の左手にはストップウオッチ。受験者は各試験官の前に一人づつ座って机の上に置かれた送信文字のリストを読み上げます。内容は「受話」と同様、ランダムに並んだアルファベットでした。先程の「受話」
もドキドキしましたが、「送話」の方はもっと落ち着きませんでした。大した事をするわけじゃないんですけどね。
試験官の前で挨拶のあと、着席しましたが、まだドキドキしていたので呼吸を整えようと「済みません、ちょっと待っていただけますか。」と言うと、「そんな、緊張しなくてもいいですよ、別にそんなに…ねぇ。」と初老の試験官。私にはその一言が「別にそんなに(厳しく採点してませんから)ねぇ」と聞こえました(勝手な解釈)。試験官の温和な表情に少し落ち着いた私は「はい、それでは『始めます、本文』」。試験官がストップウオッチを「カチッ」とスタート。私は「受話」のテープと同様に5文字づつ区切って同じようなペースで読みました。これは息継ぎの意味もあるし、5文字ごとの間の時に先を見ておけばトチリも減るからです。思い出すのに時間がかかる文字も息継ぎの間に少し考えることができます。
また、テープと同じペースなら2分以内に収まるでしょう、という狙いです。そして、100文字どうにかノーミスで終了。
「終わり」の一言とともに長い1日が終わりました。「送信」の試験が終われば流れ解散なので、受験番号の小さい人はすぐに帰れる一方、受験番号が後ろの人はかなり待たされたようです(マンツーマンの試験ですから)。
私自身は4:30頃に終了し他の同僚の終わるのを待って5時過ぎ帰宅の途につきました。

・結果
約1ヶ月後、合格通知をいただきました。直前だけとはいえ、努力もし、それが報われたのは、うれしく思いました。
最後にこのHPで情報を公開して下さった関係者のみなさま、関連情報の少ない中、受験情報や体験記の内容は本当に参考になりました。この場を借りて御礼申し上げます。ありがとうございました。


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