広野 勝氏   『第一級陸上無線技術士受験体験記』

受験に向けての心構え、具体的な勉強法そして苦労話などが語られており、現在「陸技」を目指されておられる方々やこれから目指される方々に大変参考になります。

第一級陸上無線技術士 受験記  広野 勝氏


日々の仕事で忙しい中、受験に挑戦している皆さんの様子を見聞きして、私の受験経験が少しでも役立てばと思って書きました。

仕事の合間の限られた時間で受験勉強するために必要なのは
①時間を作り出す。(これはある程度絶対必要です。)
②効率的に勉強する。(自分の環境、性格に適した工夫が必要です。)
③途中であきらめない。(そんなに簡単でもないが、べらぼうに難しいものでもない。)

この3点に尽きると思います。細かなことはこのあと時系列に書きますが、

私にとって『時間を作り出す』ことに有効であったのは
1. 朝晩の通勤電車の中を勉強に利用したこと。
(仕事を離れた環境で勉強するのは、頭がリフレッシュされていて効果的でした。)
2. 出来るだけ土、日曜日の午前中は図書館で集中的に勉強したこと。
(私は午後は一切勉強はしなかったが、体力・集中力のある人はもっとやった方が良い。)
3. 電車の中、始業前、昼休み、業後なども併せて1日平均2時間程度勉強時間に当てたこと。
(この試験のために睡眠や余暇の時間を減らしたり、生活のリズムを変えませんでしました。)

『効率的に勉強する』ことに有効であったのは

1. 過去問を徹底的に勉強したこと。
(アンテナのような成熟した技術や、伝統のある法規では奇問、新問は作れるものではない。
事実、今回の無線工学BではA,B併せて25中23問、法規は20問中17問過去問で
見たことがあった。基礎と無線工学Aの問題も見たが同じ事が言えると思った。)
2. 自分の理解できるレベルで勉強をやったこと。
3.参考書、参考資料は出来るだけ少なくして、シンプルに勉強したこと。
(はじめは沢山の公式やキーワードを記憶できるかと危惧したが、1冊の教科書で数式、
図、グラフなどを繰返し参照しているうちに、パターン認識で覚えてしまっていた。
種々の色の暗記ペンで塗りつぶしたので、本は全く汚れてしまった。)

『途中であきらめないこと』

1.はじめからあまり張り切ってやりすぎないこと
(張り切りすぎると途中で息切れがしてしまって、長続きがしない。)
2.可能なら受験仲間で情報交換するのも良い。
(私はほとんどやれなかったが、過去問分析、進捗状況、出題傾向などの情報交換をすると
自分の考えていたものと別な角度から連想出来たり、自分が苦しい時はみんなも苦しい
ことが分かる。しかし、一人で達成すると多少今後の何かの自信にもなる。)

『その他、過去の問題集を数回は繰返し勉強する』

これは加齢とともに回数をプラスする必要があるらしいが、少なくとも1回では無理でしょう。
それでは問題の意図の細部まで注意が行き届かない上に記憶は定着しない。

私がどの程度のレベルから勉強を開始したかを言っておかないと、私の勉強方法が理解し難いと思いますので、必要最小限で書きます。
目標はぐっと気張って1回で合格、それも高得点合格でした。
大学では電気工学科電子工学(今は材料工学とか言うのでしょう。)を専攻しましたが、40年ほど以前に電気回路や電波伝播の講義も受けたという記憶はおぼろげにありました。
(私は現在62歳ですが、今回の勉強で特に加齢のハンデは感じませんでした。もっとも仕事では楽をさせてもらっていました。)
卒業後、40年間はメーカーでテレビカメラ、画像有線伝送、画像計測のなどビデオ機器の設計をやってきました。
また、その後半は管理職として過ごしていたため、設計業務から一歩離れていました。
したがって、無線機器やアンテナの技術には縁がなく、知識はほとんどありませんでした。
ただ仕事上の必要から工事担任者(アナログ、ディジタル)、電気通信主任技術者の資格が取ってありました。
そのため、この試験では「通信の基礎」と「無線工学A」が免除になっていましたので、「無線工学B」と「法規」だけを受験すれば良いことになっていました。これはこの試験を楽にしました。これがなければ1回で合格はしなかっただろうと思っています。だいたい受験をしなかったろうと思います。
4科目1度に受験する方々の苦労が忍ばれます。
多忙だったり、アンテナなどの知識がないならば、4科目を前期、後期に分割するとかして科目を絞り込んだ方が良いのかもしれません。私は偶然でありましたが、取り易い順序で受験ができました。急がないのであれば、このように科目免除で楽な取得順序を考えた方も良いのかもしれません。
(余談ですが、マークシートの試験なのに、この試験の受験料は高いと思いませんか?)

私が受験を志したのは平成12年9月中頃でした。理由は知人が受験するのを見て、私も2科目免除になるのだから、楽に合格出来るだろうと踏んだからです。さっそく教科書として電気通信振興会 第一級陸上無線技術士無線工学B『アンテナ系及び電波伝搬』、問題集として第一級陸上無線技術士『問題解答集』、法規は東京電機大学出版局 吉川忠久著「1・2陸技の徹底研究 電波法規」を購入しました。
教科書をすぐ読みはじめたのですが、第1章 空中線理論の数学(三角関数、複素関数、微分方程式)でお手上げしてしまいました。「数学の勉強でないのだから。」という理由でこの本をパスすることにしました。
もっとも、今回の試験にはこの種の数式を使う問題が2問出ました。しかし、数式を直接解かなくとも、周りの解答項目を見ているうちに解けてしまいました。
約2週間のロス。(試験に合格するという目的からはロス。)

教科書のレベルを二陸技にして、東京電機大学出版局 吉川忠久著「2陸技1・2総通受験教室④無線工学B」を購入。
(立ち読みで理解出来そうだったので飛びついた。)
この教科書は基礎学習と練習問題から構成されており、うまく相補関係にあったのですが練習問題の部分は難しそうだったので省いて勉強しました。基礎学習の部分だけを2週間で読んだら、分かったような気分になってしまいました。
その直後、一級の過去問を1回分解いて試たら正解率20%程度。
二級の教科書での勉強では、一級の問題に挑戦しても駄目かと考え直し、また新たに電気通信振興会 第二級陸上無線技術士『問題集』を購入しました。二級の過去問でも同じく正解率25%程度。結局は教科書の問題でなく自分の問題でした。問題意識を持たず、漫然と読んでいたから、このような結果になったと理解していますが、それでも無線工学Bの範囲と教科書のどの辺に何が書いてあるかを知ることができたのは有益でした。

これは大変と心を入れ替えてしっかりと取り組みました。この時期はもう10月半ばになっていました。
こんどは教科書をきちんと読み、その練習問題もある程度やって試ました。
この教科書の練習問題は量が多い上に記述問題に準じていたため、苦しいものでした。
(マルチ・チョイスの問題に比べて、記述問題は難しいですね。)
良く理解できなかったところは付箋を貼って注意しておき、連続して短期間にがむしゃらに問題をこなすことはせず、次の易しい問題に進みました。通勤の電車の中でその付箋を貼った難しいところを翌日新鮮な頭ですぐやるようにしました。このように難しいところは場所と時間を変えて、頭をリフレッシュして少しづつ分散してやりました。
難しい問題を続けて克明に潰していては、頭が硬直して集中力がもたないと思ったからです。一度に詰め込むと疲れて来て、不十分なのに分かったと自分に妥協するだろうと踏んでいました。
しかしこれは何時かは潰す必要があるわけですが、私の集中力の持続を考えて私の能力の範囲内で効率的にやったつもりです。
これは場合によっては良い面と悪い面が両面ありますが、この種のマルチ・チョイスの問題ではこのやり方で良かったと思っています。
結果から言うと、更にこの教科書の記述練習問題をやる前に、過去問を先にやった方が効率的であったと思っています。
記述問題は力が付くのですが、効率から考えると比較的易しい過去問から入って、無線工学Bの様子を全般的に把握して
いた方が良かっただろうと思っています。章が違っても内容が密接に関係があり、あとの章で理解が深まったことがありました。

付箋はある程度貼りついたままでしたが、この教科書を一通り終わるのはもう11月初旬でした。
話が前後しますが、10月からはパソコンで1ヶ月単位で毎日の予定と進捗状況を管理していました。無理な計画で勉強が嫌にならないように楽な日程にしたが、それでも毎月下方修正が必要でした。もっとも、さらに楽な計画にしていたら、もっと遅れたでしょう。
法規は無線工学Bに対し1/10程度の少ない時間を割り当てて計画し、それをやるのは工学Bの勉強で頭が疲れたとき
癒す時間程度に考えていました。
連続して集中力を持続できる時間は当初連続1時間弱、その後修行が進んで1.5時間まで伸ばせたが、実際の試験で、
無線工学Bの割り当て時間2.5時間では、やはり頭が硬直してしまい緊張感を持続は出来ませんでした。
11月初旬になってもう力も付いただろうと二級の過去問をやって試たら、正解率40%の出来で、進歩があまりありませんでした。悪すぎたので、こんどは教科書を離れ、過去問を中心に同じよう付箋をつけながら解答を参照し、分からないところは教科書を参照しながら、けっこう克明にやりました。
問題をやってから分からない部分を調べるというやり方は一見非効率に思われますが、毎期の試験ごとに類似問題が多いこのような資格試験の問題では最初は調べる回数が多いのですが、すぐ減って効率的であったと思います。
法規については特に効率的でした。
このように過去問の分からない部分を潰したので、正解率80%にまで達成したと思いました。しかし、改めて問題集の最初から通してやったら、正解率60%程度でした。
この頃は前に理解したと思っていたものを、新しく復習したことで壊しているようで、勉強したのが逆に頭の中を混乱させているようにさえ思えていました。
いま、振り返って見ると実はこれは勝手に私が理解したと思い込んでいたことと、少しの勉強で記憶が定着する方が無理だったのです。
この頃は先が見えなく、精神的なプレッシャーが大きかったように思います。
分からないところの再度の潰しを重ね、何とか正解率80%位の出来で平成8年から11年までの分を通してできるようになったので、一級の問題集に進みました。この頃は12月初旬を過ぎていた。
一級の問題もやはり難しく、また一つ一つ問題を潰す必要はありました。それでも二級の問題集をこなして基礎が出来上がったようで、この頃はトンネルの向こうに光が見えたように思われました。
これを続けていたら12月末になっていました。頻繁に出てくる重要公式は単語帳などに書いて別に覚えようかと考えていましましたが、問題集をやっているうちに知らず知らず公式が頭に定着していました。
この頃やっと自分の本当の弱点が見えてきました。弱点は電波伝搬で、電波の種類別の伝わり方や伝播上の諸現象について想像力がついて行けず、頭の中の整理が出来ませんでした。定性的な事項が多くごちゃごちゃしていて、教科書の説明も理解できない部分がありました。この部分は丸暗記するしかないと腹を括ることにしました。
意味が分からないキーワードは昔歴史の年代を暗記した時のように、何かに関連つけて覚えるようにしました。
例えばフラウンホーファ領域はファだからフレネル領域より遠いのだななどと勝手に関連つけて覚えるようにしました。
意味のあるキーワードは英単語がほとんどで、つづりから意味を取り出して覚えました。
公式については問題を解くとき、出来るだけ基本から公式を導き出して計算するように練習していたら、そのまま覚えて
しまいました。
日頃、電卓に頼る習慣がついており計算力が落ちていて、ややこしい計算問題ではよく計算間違をしていました。
(電卓持ち込み禁止というのはこの試験でどういう意味があるのかと思っています。)
きちんと解答が出るまで計算練習をしたが、この弱点は最後まで私の心の中で残りました。
今回、ややこしい計算問題が出なかったのは幸いでありました。
私には結局一級と二級の問題の難しさの差はあまり分かりませんでした。「二級が少し素直かな。」「一級は細かなところまで問うているかな。」と思う程度であったので、受験は一級でしたが、購入した問題集は両級とも同等に練習をしました。

無線工学Bは暗記科目、法規は理解科目ではないかと私は考えています。
・無線工学Bは自然現象をもとにしているので「自然現象から見て正しいのはこうだ。」と言われると、想像力の範囲を超えていたら「ああそうですか。」と思うしかないので、丸暗記。公式が記憶にあれば短時間で解答が出ます。
また解答の数式が見たことのある形になると、安心して正解ということが分かります。そのため公式を暗記できるまで問題練習する方が良いと思います。
実務経験がない私にはアンテナの理論は接ぎ木をした理論のようなもので実感がなく、ペーパー上の虚構の論理のような気がしていました。
ただ町中で注意して屋上や車上のアンテナを見ると、教科書に出てくるアンテナを意外とたくさん見ることができたのは新鮮で、世の中が広がったような気がしました。
このアンテナの長さだと波長はどのくらい、垂直アンテナだから垂直偏波だろうとかとか想像して意外と楽しかったと思っています。
・法規は人が作るもの。電波法は通信事業法、放送法とか他の法律と整合がとれていなければならないことになっています。また人間の活動を規正しているわけですから、人間臭さがあります。そのため日常の生活の中からなぜこの法令がこのような文章になるかは、ある程度推測できると思いました。ある程度常識で解けると言って良いかと思います。

12月末で試験勉強は目鼻が付いたと気が緩んで正月は酒を飲んだり、テレビを見たりしていて、試験勉強を10日間も休んでしまいました。
門松も外れて勉強を再開したら、勘が鈍っており、分かった筈の問題があまり解けない。頭の中でつながっている筈の理解の連鎖が途中でちぎれていました。慌てて再度、過去問をしっかりとやり直しました。こんどは正解を出すだけで終わらず、なぜ別の解答項目でなく、自分の選んだ解答項目が正しいのかというところまで踏み込んでやりました。
この勉強方法で記憶の連鎖をたどらなくとも、基本に戻って自分の記憶している知識をひねれば、問題は解けるようになったと思いました。応用力もついたと思っていました。
けがの功名で、試験場では当初解く糸口がなくとも、解答項目の中から正解を炙り出すことができる自信があったので、慌てなくとも済みました。
結局3回、過去問をやりました。納得出来ない問題はもっとたくさんやったのですが。
今から考えると甘くはありましたが、試験直前には過去問と同じようなものであれば、無線工学B、法規ともに90%以上の得点をとれると自信が出来上がっていました。沢山ある公式も網をかけたように、横断的に関係づけられるようになっていました。いい気なもので、試験ではどんな問題が出るのだろうと楽しみな気分にさえなっていました。

試験日は1月23日、24日でした。残念ながら自信と裏腹のアクシデントがありました。無線工学Bでは、過去問とほぼ同じ問題で何回も練習したことのあるT型ブリッジのインピーダンスの符号を読み間違っていたのに気づかず、計算に専念してしまいました。答えが複雑になり、この種の問題ではこんな解答になる筈はないと冷静に戻って、やっと気がつきました。この問題は正解になりましたが、3回もこの問題の計算をやってしまって時間をロスしてしまいました。
そのため、時間が切迫した上に集中力が途切れて、勘が鈍ってしまっていて過去問にあった全く同一のやさしい別の問題を2問も間違ってしまいました。
(やはりそれほど実力は身についてはいなかったのでしょう。)
もう1回過去問をきちんとやっておけばと多少悔やみました。
難しい部分は何回も練習していたのですが、易しい問題はおろそかになっていました。
試験結果は解答速報と照合すると無線工学B;72%、法規;90%でした。
無線工学Bは水一口飲む余裕があれば、85%は取れた筈と反省しています。いくつかの誤解答があったことと、その間違った理由も、試験場の階段を降りながらすぐ気が付きました。自分でも説明できない変なところで迷ってしまい、分かっている筈なのに逆の意味の解答を選択していた問題もありました。
今回の無線工学Bは例年より易しかったと感じられますが、無線工学Bでは自分で間違ってもしょうがないかと納得せざるを得ないのは2問だけでした。
少し不遜な言い方になりますが、合格はしましたが、無線工学Bはあまりの不出来で内心は忸怩たるものがあります。
日頃の勉強はもちろん必要ですが、土壇場に強くなっていないといけません。勘と気力、体力も養っておく必要があるようです。
法規は直前のバスの中で最後の確認した衛星通信の関連の法令に助けられて、新問をクリア出来ました。他の航空機地球局の問題、符号分割多元接続の問題はちょっと勘違いして間違いましたが、これは愛敬程度と思っています。
(法規ではこの衛星通信の問題が最近多くなっていますね。)
試験場で、多少違和感を感じたのは席が決まっていないのと、郵政省から総務省に名前がにわっていたことです。
これには少し戸惑いました。

はなしは変わりますが、実は12月末近くになって良書と思われる無線工学Bの教科書;東京電機大学出版局吉川忠久著「1・2陸技受験教室3無線工学B」と法規の本;東京電機大学出版局 吉川忠久著「1・2陸技受験教室4電波法規」を見つけました。
無線工学Bの方は私の使った教科書と同じ著者ですが、練習問題はマルチ・チョイス対応になっていました。
基礎学習の内容はほぼ同じでしたが、構成が簡潔に整理されており図表も多く分かり易くなっていました。
索引も便利になっていました。
法規の方も同じ著者ですが、最近良く出てくる衛星通信の部分が補強されておりました。
ただし、私は手持ちの教科書で既にパターン認識によって公式とか図が頭の中に定着しつつあったので、教科書は変更しませんでした。
今回落第したら買うことにして、1回立ち読みをしただけで購入は見送りました。
これから受験する人はこの本も検討されたら良いと思います。
受験雑誌は購入も立ち読みもしませんでした。その理由は私の行った書店にはおいてなかったためです。

このように私は結構試行錯誤で回り道して効率を落としてしまいましたが、マルチ・チョイスの問題ですから、この試験はそんなに難しい試験ではありませんでした。もちろん甘く見ては行けません。
(余談になりますが、誰にとって難しいかという問題がありますが、電気通信主任技術者の専門、ネットワークスペシャリスト午後の試験など技術進歩の激しい分野での記述試験の方が相当難しいのではないでしょうか。)

マルチ・チョイスの過去問でも、正解を出すだけでなく、正解以外のの解答事項の狙っているところ(ただの引っかけか、本当に理解しているかを問うているかなど。)を注意深く、批判的に練習すると、マルチ・チョイスの過去問でも結構示唆される部分もあり、深みのある勉強になると思いました。
最後にこれから試験に挑戦されている方々が時間と効率をうまく使って、目的を達成されることを期待します。

以上

2001年 3月12日 広野 勝


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