矢吹 浩徳氏 大いに楽しんだ受験(電波受験界99年8月号より)

社会人として仕事を持ちながら10年間でいくつも資格に挑戦され、一陸技まで到達された方の体験記です。


大いに楽しんだ受験
矢吹 浩徳氏


1.はじめに

本誌のこの欄でいろいろな方の体験記を拝見して随分参考にさせていただいておりましたが,今回幸い書く側となる幸運に恵まれました.1936年生まれの私にとって今からでは年齢的にアマチュア業務以外の実務に生かせる見込みは殆どないことを承知の上で,ここ10年ほどの間にいくつかの資格に挑戦,と申しますより気楽に楽しんで参りましたが,どうやら一陸技まで到達して一息入れているところといった次第です.

社会人として仕事を持ちながら受験準備を進めていらっしゃる皆さんは専門の学校で勉強されていらっしゃる皆さんと違って実際の試験のやり方などについての情報が少なく,また受験のこつといったものについてもアドバイスを受ける機会が少ないのではないでしょうか.
そういった皆さんにとって少しでもご参考になればとの観点から,私の拙い体験を書いてみたいと思います.

2.私の受験歴
先ず私の受験歴は次のとおりです.
1954年10月 (旧)第二級アマチュア無線技士
1956年 4月 同上再挑戦
1989年10月 第二級アマチュア無線技士
1994年10月 第二級陸上特殊無線技士
第一級陸上特殊無線技士
1995年 2月 第四級海上無線通信士
航空無線通信士
3月 第一級海上特殊無線技士
航空特殊無線技士
1996年 4月 第一級アマチュア無線技士
1998年 1月 第二級陸上無線技術士
1999年 1月 第一級陸上無線技術士

高校最後の年,大学受験準備をしながら受けた二アマはやはり駄目でしたが,1年間の浪人生活のあとの大学入試が終わった直後に受けなおした1956年の試験では何とかなりました.その後法規の改訂があって当時の二アマは今の四アマに相当する電話級に格下げになってしまいました.
思い立って元の資格を取り戻そうとして受けたのが1989年の二アマです.それを機会に暫く休止状態にあったアマチュア無線を再開して,これは今でも続いています.
その後三陸特の資格が必要になることがあって,どうせ受けるならその上の二陸特,更にもう一つ上の一陸特も駄目で元々,ついでにと受けて合格したのが病みつきになって,その後の試験場通いが始まった
次第です.流石がに一陸特は難しく,アマチュア無線の知識や経験は殆ど通用せず,聞いたことのない話ばかり.その受験を通して最近のマイクロ波や多重無線の世界がおぼろげながら見えて来たのが大きな収穫でした.
陸上でさえもこれだけ新しいことが出て来たのだから海や空にはもっと知らないことがあるに違いない.
先ずは陸上で経験して少し身近かになった特殊無線技士をと思いましたが,そのすぐ前の月に特殊のつかない通信士も海上と航空の試験が続けてあることが分かりましたのでこの4つを続けて受けることにしました.
この 4つの試験では,アマチュア無線ではかなりいい加減に使っていた和欧両文の電話フォネスティック・コードを正確に憶えることが出来ました.また本来アマチュア無線技士も理解していなければいけないのに知識が曖昧だった遭難通信,緊急通信,安全通信,非常通信の区別や優先順位などについての理解を深めることが出来,更にレーダーや航空無線についての全く新しい技術に触れることが出来たのも大きな収穫でした.
そのあとはアマチュアの最上級を受けて,それでお終いにしたつもりだったのですが,どうもまだ物足りない.
総合通信士では科目が少し多過ぎるので先ず二陸技.となればこれも駄目で元々一陸技も同じ期に続けて,という計画を立てましたが,どうしても日取りの都合がつかず,この期は二陸技だけとなりました.その年の
2回目も日程の調整がつかず,結局一陸技は 1年後となりました.そのため二陸技で得た,一陸技でも殆どそのまま使える筈の知識の多くがこの間に散逸し,随分効率の悪いことになりました.
この二資格とも法規はそれまで受けたものの中では易しい方でしたし,工学も二陸技は一陸特,四海通,航空通,一アマの知識を整理するだけでほぼ半分はいけたと思います.一陸技の工学も二陸技と比べてそれほど
大きな差は感じられませんでした.
初めて受けた二アマ以外は最新の一陸技まで全て1回で合格出来たのは勿論私の実力以上,大変な幸運に恵まれた結果であることに間違いありませんが,私の作戦が功を奏したのではないかという多少の自負もありま
すので,次にその辺りをご紹介いたします.

3.私の受験作戦
私の作戦と申しますよりその多くは経験を通して得た受験のテクニックのようなものですが,効率的な受験に役立ったと思われる点を次にいくつか挙げてみたいと思います.全ての方に有効とは思えませんが,そんなやり
方もあるのかといった程度のご参考になればと思います.これまでに取った資格の中で価値ある資格はやはり最後の一陸技なのでしょうが,私にとっては実はこれが一番あっけなく,楽しんだのはむしろその前のいくつか
でしたので,それらも含めてということになりますことをお許し下さい.

(1) 科目合格のある試験でも 1回で全科目合格を目指す
初めから 1科目だけの準備しかしないことに徹するのなら別ですが,どうしてもその他の科目にも多少は手を付けるでしょう.若い皆さんはそんなことはないと思いますが,記憶力の落ちた私など,そこで得た多少の知識の記憶を半年保たせる自信がありません.また始めからということになりそうなので,いっぺんに全科目合格を目指しました.

(2)各科目 100点は目指さない
電気通信術以外の科目の合格点が何点なのか,一番知りたいことがどこにも書いてないようですが噂のとおり60点らしい,という仮定のもとに私が目指したのは各科目65点.その辺りに目標をおかなくてはいっぺんに全科目合格はとても覚束ないでしょう.25問あったとして15問出来れば60点,もう 1問出来れば64点, 9問落としても合格となれば随分気が楽になります.

(3)その上の資格との同時受験を目指す
二アマを取れば一アマ,二陸技を取れば一陸技を取りたくなるのが普通でしょう.それなら同時受験が効率的です.特に記憶力に自信のない方にはこれがお奨めです.一つ上の資格は駄目で元々,科目合格のある科目が1科目でも受かれば儲けもの.次回他の科目に集中出来ます.科目合格はこのような使い方をするのがよいと思います.アマと陸技に関しては,法規は一級でも二級でもその差はわずか,工学は二級で75点取れる力があれば一級でも60点は先ず大丈夫,その程度の差のように感じます.
ただし二陸特と一陸特との差はもっと大きいでしょう.一陸特をお受けになる方には前後いずれかにある二陸技との同時受験をお奨めします.若し二陸技が先になって,幸いこれに合格すれば一陸特は必要なくなります.

(4)知識に共通部分が多い資格も同時受験
普通はこのような必要性のある方は少ないのでしょうが,私の場合は1995年 2月の四海通と航空通,続いて 3月の一海特と航空特の同時連続受験は効果的でした.

(5)準備は既出問題中心で
その資格用に出版されている教科書を先ず一とおりで勉強するというのが常道なのでしょうが,教科書を読んでいるとこれから憶えなければいけないことが山ほどあって暗澹たる思いに陥ります.そこで途中から方針を変
えました.先ず既出問題を当て推量でもいいから解いてみる.それでどうしても解らないところを教科書や専門書で調べる,というやり方で,これは受験技術の向上という点だけでなく,教科書に出ている,例えば数式の
本当の意味を理解するという点でも有効だったと思います.

(6)試験場では時間一杯粘る
試験場では時間一杯最後まで残る人は殆どいませんが,人のことは気にせずに,私はいつも最後まで粘りました.
あと30分粘るのは苦しいけれど,ここ 1問の違いであと半年間またやり直しに比べればどおってことはないと自分に言い聞かせて粘りました.時間ぎりぎりに問題の読み違いに気が付いて答えを直したものがいくつかありました.
余裕をもって合格出来た試験でも,見直し不足で落とした問題があるとそれが悔しくてその後に差し支えたのではなかったかと思います.

(7)問題には正面から取り組む
所謂引っ掛けるような問題は先ずないと考えてよいと思います.既出の問題の中にはその資格としては余りにも簡単過ぎると思われる問題がときどきあります.そのようなとき,普通に考えればこの選択肢が○,だけどそんなに
簡単な問題が出る訳がない,どこかに落とし穴があるに違いないと考えて間違った選択肢を選んでしまう.これは随分自戒したつもりですが本番でいくつかやってしまいました.特に時間一杯になって最後に書き直したとき,その意味では上の(6)の作戦がマイナスに作用したこともありました.

4.科目毎の留意点
次に,私が受験した資格の範囲に限られますが科目毎の気が付いた点について述べてみたいと思います.

(1)電波法規
法規の改訂は予想以上に頻繁にあるようです.学校に在籍せず,関連する実務にも従事していない受験生の弱いところはこの辺りで,情報が中々入りにくい.本誌を注意深く読んでいれば問題ない筈ですが,古い教科書や既出問題の解答だけに頼っているととんでもないことになります.最新の法令集を全部手元に揃える訳にはいきませんから,私は確認のため近所の公立図書館に何度か通いました.

(2)工学
これは記憶力に富んだ方と私のようにそうでない者とでは作戦の立て方を変える必要があると思います.
記憶力に自信のある方は物性に関する問題などは稼ぎどころでしょうし,空中線からある距離離れた位置の電界強度を求める式などは空中線の形式別に全部憶えてしまうのが早いのでしょうが,それが出来ない私は前者は放棄,後者は基になる一つの式だけを何とか憶えて,あとはどうすればその式から空中線の形式別の式を導けるか,を理解することに努めざるを得ませんでした.
それと長文の問題に驚かないこと.長文の問題に限ってあっけないほど易しいものが多いことにお気付きの方は多いと思います.

(3)電気通信術-電信
これは一,二アマの欧文の受信の試験の経験だけしかありませんのでその範囲だけについて申しますと,先ず送信術は忘れて受信の練習だけに徹すること.それもある程度速いスピードのテープを繰り返し聞く,聞くだけ
でなく必ず書く,通勤の電車の中でしたら指で膝の上にでも書く,ことだと思います.私が二アマを受けたときは50字/分のテープから始めて,半分取れるようになったら60に上げ,それが半分取れたら更に70まで上げました.
70が半分取れるようになってから45字を聞いてみるとその何と遅く聞こえることか,自信と余裕を持って練習が出来るようになります.これを何度か往復しました.一アマのときは70と90を行ったり来たり,ときどき100も聞
きました.

(4)電気通信術-電話
これは電信に比べると遥かに簡単,自己流でも何とかなりそうですが,和欧共やはりテープは聞いておいた方がよいと思います.これは受信の練習のためより,特に欧文の正しい送信の練習のために絶対必要だと思います.
アマチュア無線をやっておられる方は特に要注意.America Boston Canada Denmark England などとやってしまったらもうおしまいです.S をセーラ-,Q をキューベックなどとやるのも危ないと思います.
和文の受信は片仮名で書いても平仮名で書いても OK,濁点や半濁点は 1升空けても空けなくとも OK だそうです.
送信のときに渡された問題の文章が何度もコピーをとったものらしくあまり鮮明でなく,濁点があるのかないのかよく見えないところがありましたので,試験に入る前に質問して確認しました.「始めます」とやってからでは
手遅れです.
電信の場合もそうですが,平文の受信のとき,その意味は絶対に考えないこと.意味に気を取られていると直ぐ2~3 字遅れてしまいます.

(5)英語
これも学校に行っていないと準備に苦労しますが,私が受けた範囲のレベルでしたら案ずるより生むが安しで,中学高校程度の英語力と社会人の常識があればぶっつけ本番でなんとかなります.ただし最近は辞書の持ち込みが出来ないようですから,海事や航空関係の専門用語を少し憶えておいた方がよいと思います.
この科目も遂に多肢選択式になって,少し気が楽になった皆さんが多いのではないでしょうか.私のときはまだ記述式でしたが,英会話でどうしても聞き取れない質問があって,苦し紛れに答案に"Sorry, I couldn’t read you,due to heavy noise.Please repeat your question"と書きましたが,あれで何点かはもらえたか知ら.などと考える楽しみはなくなりましたね.

5.おわりに
まとまりのないことを思い付くままに書きましたが,少しはご参考になりましたでしょうか.この程度のレベルのことでしたらまだまだお話ししたいことが沢山あります.ご関心のある方はご遠慮なくお申し付け下さい.お待
ちしております.
それにしても苦労して取った割には最近の免許証は何やら薄っぺらい感じですね.40余年前にいただいた二アマの免許証はもっと立派なものでした.一陸技くらいになったら金文字入りの皮表紙くらいついていてもいいのではないか,などと申しますのは贅沢でしょうか.それともう一つ不思議なのが試験場への電卓の持ち込み禁止.計算尺は私の年代でしたら技術屋にとって必須でしたが,お若い皆さんは見たことがおありになるのか知ら.
皆さんのご成功をお祈りいたします.楽しくやりましょう.


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