佐藤 隆氏(電波受験界97年10月号より)『最後まであきらめずトライ』

一陸技、一海通を取得された方の体験記です。


表題:最後まであきらめずトライ(原文を少し修正)
(1陸技・1海通)   佐藤 隆氏


1.はじめに

平成8年9月10日付けで、ようやく「1陸技」の免許証が交付され、25年間の無線従事者の免許を得るための努力がみのりました。「電波受験界」にもいろいろお世話になりましたので、もし私の合格体験談が少
しでもお役に立てたらと思い、原稿用紙に手を添え始めました。

2.無線との出会い

私は、中学校のとき科学クラブに入部していましたが、たまたまクラブの先輩がアマチュア無線の免許を取り、クラブ局や個人局で楽しんでいるのを見て昭和45年のときJH2CQAのコールをもらい開局しました。
高校は普通科へ進学しましたが、無線通信士の資格があることを知り、高校1年の秋に、特殊無線技士(レーダー)に合格したことがきっかけで、ますますプロの通信士にあこがれるようになってしまいました。
高校2年の秋には、多重無線設備に独学で合格。高校3年生の夏休みには電話級無線通信士の資格までとってしまいました。お陰で、大学入試の勉強はそっちのけになってしまい、浪人してしまいましたが、翌年東海
大学工学部通信工学科へ入学しました。
この頃までに2アマまでとれましたが、1陸技などはまだ問題を見てもチンプンカンプン。全く手がでませんでした。大学では、別に国試対策などやっていなかったので一度はトライしたものの、予備試験には合格し
ましたが、本試験では歯が立たず、あっという間に10年が過ぎてしまいました。

3.再度一陸技にトライ

大学を卒業してから、たまたま父が教員だったため、三重県境員採用試験(電気)を受けましたが、力不足でしばらく工業高校で非常勤講師をしていました。
数学・理科を担当していた時、定時制電気科の生徒の中に電気工事士の資格を受験しようとしている生徒がおり、これがきっかけで一陸技を受験してみようという気になり昭和60年6月に予備試験を受験しました。

4.一陸技受験体験

(1) 予備試験
まず、予備試験が合格できないと、本試験が受験できないし、他の資格の予備試験も免除にならないので、予備試験対策を考えました。まずなくてはならないのは、問題集です。さっそく電気通信振興会の「無線従事
者国家試験問題集(一陸技)」を買い、次に買ったのは、「電波受験界」です。
なぜかというと、「電波受験界」には、試験前になると各資格ごとに「傾向と対策」が必ずでるので、それを目安にA問題・B問題を問題集でマークし、その問題の解答パターンをおぼえこむことです。
これは、本試験の時にも役立ちました。(ただし、今はマークシート方式になっているので勉強方法は当時と異なりますが)
まずA問題・B問題をワープロで問題と解答を打ち込み、プリントアウトしました。図や式等は 解答といっしょに書き込めるようにしました。そして、暇を見つけては問題を何度も読み直し、ほぼ暗記してしまうくらいにしてしまいました。でもこの方法だと、理解できていない部分や途中の計算式をわすれてしまうこともあるので、できるだけ計算式は自分で導くようにしました。文章問題も丸暗記ではなく、文章を見て自分なりの文章で内容が相手に伝わるようなくふうをしながらおぼえていきました。
これだけでは、ヤマがはずれると思ったので、過去2年間出題された問題は除いて、過去7年間に出題された問題にも目を通すようにし、少しでも解答が書けるようにしました。ただし、点数をとりたいあまり、余分なことは書かないようにしました。
そして、いよいよ予備試験当日、まだ自信がないまま試験場の名古屋電気通信工学院の方へ出向き、試験官が「机の上をかたずけるように」という指示があるまで、ノートを読んでいました。
そして、時間がきて問題をみると5題中4題までが既出問題でした。このため、解けやすいと思った問題から順に、エンピツをはしらせ、4題は例題(模範解答)の趣旨どうり書けました。あと1題は新問でしたが、
白紙で出してもよかったのですが、知っていることは書いておけば点数になると思い書けるところまで書きました。(ただし間違ったことを書くとかえって減点になると思われますのでやめた方がいいと思います)
試験開始後2時間後には「もう合格したな」といった感じで試験室を退場しました。そして1ヶ月後に待ちに待った予備試験の合格通知がきました。しかし、予備試験合格だけでは、1つのハードルをこえただけ。
これからが大変でした。そういったわけで、最初は二陸技の本試験からチャレンジしていきました。

(2) 本試験(二陸技)
一陸技もレベルが高くなるだけで結果的には勉強方法は変わっていませんし、法規以外は、予備試験と同じような勉強方法でのぞみました。
ただし、二陸技の科目合格まで、仕事などの雑用が入り、最初の合格科目「無線工学A」の合格通知がきた、平成5年3月まで6年間もかかってしまいました。
1つには、試験に対する勉強のあまさがあったのは言うまでもありません。でもその間、電波受験界の「受験研究室」には毎回お世話になったのは言うまでもありませんでした。
「無線工学B」も次の夏休みに合格し、法規は「暗記」で苦労したものの、平成6年の試験でみごと合格、二陸技の免許をもらうことができました。

(3)本試験(一陸技)
さっそく、平成6年4月には一陸技の願書を出し、電波受験界も買い一発合格のつもりで勉強を開始しました。そして、6年7月期の試験にいどみました。この時はどういったわけか、「ヤマ」が当たりすぎたのか、「無線工学A」「法規」の2科目に合格してしまいました。もう少し勉強しておけば「無線工学B」の試験も合格できたのに・・・・と言いたくなるくらいでした。
仕方なく、次回の試験で合格をねらうつもりでしたが、3問しか既出問題は出ず、この時期より穴埋め式問題が1題は出されるようになり、この穴埋め式の問題で早とちりをして、3回不合格になってしまいました。
このため、予備試験の有効期限がきれてしまい、もう一度予備試験を受験し直さなくてはなりませんでした。
この時の予備試験は、択一式にすでに変わっており「受験研究室」もなく、問題はやさしくなった反面、まぎらわしく、広範囲にわたっていたので、対策には困りましたが、幸いにも、電気回路・電気磁気学等基本的な内容については大学で勉強していたこともあり、また万が一にもわからなくてもどれかにマルをすればあたる(ちょっとチャッカリしていますが)ので、既出問題を何度もやってみて、わからない問題はすぐに模範解答を見て解答方法をおぼえるなどして、あやふやな知識を少しでも少なくする方法を1ヶ月ほど続け、再度試験にのぞみました。本試験は2年間有効なため、何としても合格したく、自己採点では60点は以上とっていると思い、次の本試験の準備に取りかかっていました。(再度受けた予備試験は1回で合格していました)
やはり、本試験でも言えることだと思いますが、試験方法が変わってからは正確な知識を知っているかどうかと言う点と、広範囲な内容を理解しているかどうか、という2点だと思っています。
特に、本試験では、「GPS」や「MCA」等、新しい通信方式関する問題、法規では「防災関係」や「宇宙局」に関連した問題が目につくように感じました。この分野の問題の出来・不出来が合否にひびく様に感じました。これから受験される読者は過去の問題だけでなく、新傾向の問題にも目を通しておくべきではないかと思いました。
本試験は、電気通信管理局から日本無線協会へ試験が移行した初めての試験で、従来の方法(記述式)は役に立ちません。でも出題される中身は、これまでとほとんど変わりなく、60点以上さえ取ればいいんだと思
い、いわえる重点項目は頭に残るよう、問題集にアンダーラインを引きました。
予想できない範囲の問題に対する不安はありましたが、国家試験なので他人を意識したらダメです。
よく文章を読み、試験の際には、消去法で問題にいどみました。以外と、まぎらわしい問題や見たことのない問題が出されましたが、よく読み、正しいと思ったもの1つをマークして試験室を出ました。時間ぎりぎりまでねばっていたせいか、6割は何とかとれており、8月下旬に「合格」の通知がきました。これまでの努力が実ったという感じで、さっそく免許申請をし、20日ほどで免許証が送られ、「電波受験界」にも名前が載り、さっそく同僚にも報告に行きました。
また、一陸技とは別に一海通の資格も勉強していましたが,GMDSSの普及にともない新しくできた資格で、こちらの方も勉強しておいても無駄にはならないと思いました。

5.一海通の受験へと

まずは、三海通が合格すれば、一海通は一陸技が合格すれば全科目免除でもらせることもあり、平成4年9月に受験しました。
一陸技とちがうところは、法規・英語・電気通信術等の科目が増えることです。
法規については、一総通用の法規編の問題集を買い、電波受験界の「受験研究室」の一総通のところに着目、そのところにあるA問題・B問題をワープロで打ち、精読しました。ここでは無線電信に関する問題は出題されないので、その部分は割愛しました。そのかわりに、GMDSS関係に関する部分を、電波受験界で読んだりして知識を得ましたが、法規が私にとって一番苦手な科目で、最後まで、暗記には泣かされました。
次に英語ですが、一総通レベルですが、大学受験で英語になれていたので、電波受験界の「国試対策英語問題演習」「時事英語を読もう」の記事を読んで、英語はマスターしました。英会話はテープで問題を聞き取っ
て答えを書き取るだけの簡単なものでしたので、問題集で答例をおぼえておきました。
最後の電気通信術ですが「モールス」ではなく、総和・受話試験と、エプソンの機械で文字を正確に打ち込めば良いだけのことです。ただし、間違って打つと「ピーッ」と音がして、先へは進めませんので、ゆっくりでも、正確に文章(欧文)が打てるように、ワープロなどで練習しておけば合格は簡単です。
こうして2年間で、三海通の資格を得ることができ、二海通も、全科目免除でライセンスが得られました。
ただ、一海通だけは国試制度が変わる3月期に「無線工学A」「無線工学B」を勉強し、一陸技より先に免許を取ってしまいました。

6.一総通を目指して

前述のように、目標が達成されると次の目標にチャレンジしたくなるのが、地理と英語は合格。
地理は、問題集より地名や海岸局を白地図に記入しそれを暗記しました。これも大学入試の時、地理で受験したので、それほど大変だとは思いませんでした。
問題は電気通信術。いくらモールスがすたれてきているとはいえ、電気通信術が受験科目からなくならない限り受験せざるをえません。幸い、アマチュア無線をやっていたため、1アマレベルの欧文・和文は受信でき
ますが、おくれ受信ができず、四苦八苦です。今のところ受信対策として、ミズホ通信からモールス信号を自動的に発生させる入手でき時々聞いてますが、未だ電気通信術は難関です。

7.終わりに

今まで、人より長い時間かかって一陸技を取ってきたため、資格を生かせる職場へは就職できませんでしたが「忍耐は力なり」ということは実感できました。
電波受験界に「投稿記事」が載ってから、工事担任者(アナログ・デジタル総合種)を取得し、2001年には「第1種電送交換主任者(無線)」を取ろうと頑張っていますが(あと設備管理のみ受験)、一生が勉強の連続だと思っています。

なお、今までに得た資格は下記のとおりです。
昭和45年 4月 電話アマ合格
昭和46年11月 特技(レーダー)合格
昭和47年11月 特技(多重無線設備)合格
昭和48年 8月 電話級無線通信士合格
昭和50年 4月 2アマ合格
昭和50年 8月 航空級無線通信士合格
昭和60年 6月 一陸技予備合格
平成 4年10月 工担(アナログ三種)合格
平成 6年 1月 二陸技合格
平成 6年 9月 三海通合格
平成 7年 1月 二海通全科目免除による合格
平成 8年 3月 一海通合格
平成 8年 7月 一陸技合格
平成11年 5月 工担(アナログ・デジタル総合種)合格


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